"おやじは僕のことを、なぜか生まれた瞬間から「この子はできる子だ」と買いかぶってしまったのです。いつも、大人になってからも「嘉明ちゃん」か「あなた」と敬意を込めて呼んでくれました。仕事がない僕を、母親たちは「頑張れ」と励ましましたが、おやじときたら、「が」の字も言わない。「少々、運が悪いだけです」ってなもんです。息子の才能を全く疑っていない。 後々、いくらか仕事が来るようになり、時にはおやじに褒められたくて報告に行っても、不思議そうな顔をするわけです。「なんで、わざわさ。もっと出来ますよ」 僕はおやじのそばにいる限り、実に心安らかでした。ただ甘えさせたり、かわいがったりとは全然違う。 「この子はできる」という確信を持ち続けてくれる人がいると、「自分はそれほどの子じゃないよ」とわかっていても、気が楽なのです。資質や素質があれば、そういう人のそばでは、何かになれるのです。僕がそうなった、とは言いませんよ。"